【題詠blog2006】(完走)

《DARKSIDE OF THE MOON》by 小籠良夜
[07,May〜07,Oct.]




001:風
さて今宵、月の暗い側へ飛ぶよ。臆病風に吹かれたか、きみ?
002:指
裏切りはいつだってある 愛しても指切りなんてするもんじゃない
003:手紙
ヤツからの誘いの手紙 ケータイもメールも厭うエセヴァンパイア
004:キッチン
好きなもの言ってご覧な、ワインから並(な)べてシステム・キッチンの赤
005:並
つまらない、つまらない、って言うきみら 並列に繋いだ乾電池
006:自転車
じゃあ行くか?ついて来るなら自転車に二人乗りして赤錆の街へ
007:揺
たそがれにきみとぼくとがふたりだけ揺れて揺られてタンデムの恋
008:親
夕ざれて錆つく街に酸の雨 きみは不死者の親衛隊か?
009:椅子
嗚呼、なんと久しぶりだな青き者!軋む揺り椅子揺らす魔のもの
010:桜
満開の桜の下(もと)に集い来て匂いたつなり黄泉のうたびと
011:からっぽ
幾度目の地上の憂さよわが故郷(くに)の墓を暴けばからっぽの柩
012:噛
さればされば貴様こそわが同胞(はらから)と甘噛みにするその二枚舌
013:クリーム
首筋にワインの吐息など止しな。ああ、また髭剃クリームが溶けた
014:刻
血流の蒼く脈打つわが朋(とも)よ!その首筋に刻印は在る。
015:秘密
蒼白き月の下にて見つめ合う秘密結社の会合に似て
016:せせらぎ
束の間の雨に汚れる廃墟にて錆びた水脈せせらぎの如
017:医
蒼き血をわが唇にさもなくば検察医らの慰みものぞ
018:スカート
黒衣なる修道女そのスカートに匿われたし「人の子」の日々
019:雨
こうもりは傘に化けたる雨の日の貴様ニヤけて誰を狩るやら
020:信号
そこに居る、俺が愛しの青き者。信号待ちの赤の点滅
021:美
赤き血の者ら退かぬか、俺が待つ今宵の美酒は脱兎の如し
022:レントゲン
俺が眼はレントゲン技師 貴様らの皮膜剥ぎ取り心臓つかむ
023:結
たわぶれに結い上げる髪 垂れ下がるひとふさにkissうなじには牙
024:牛乳
愛してる愛してるからそうじゃなく牛乳パックごとぶちまけて
025:とんぼ
うつろなる灯りそこだけ浮き上がる夜間野球部とんぼ置き去り
026:垂
垂直にしたたる愛を受けとめて きみだけが見るぼくの醜態
027:嘘
水平にひろがる夢の垂れながし 嘘なら真直ぐ地獄へ堕ちな
028:おたく
わらわらと朝のラッシュに罵詈雑言おたくらの血は赤くて不味い
029:草
陰鬱な実家の辺り土臭き血止め草だけ生える裏庭
030:政治
ぽつぽつと昼の明りに薄暗き永田食堂つどう政治屋
031:寂
如何ほどの生き血吸えども宮人のひとりひとりは寂しきそぶり
032:上海
上海に渡って幾代はらからは闇の仕手屋と舞う公海上
033:鍵
合鍵をよこしな 今宵こちらから出向く筋書き 違えれば **
034:シャンプー
なにゆえに貴様待つ夜のリビドーよボディシャンプー泡にまみれて
035:株
仕手株を焚き付けにして炎上す 時は来れり砂上楼閣
036:組
天罰は下されたらしい焼け跡に組んず解れつする餓鬼の群
037:花びら
たわぶれに薔薇の花びらひき千切りバスタブ紅く水葬とせむ
038:灯
そこここの闇を透かして誘蛾灯ガーゴイルのはばたきが五月蝿い
039:乙女
たわぶれの少年よわが青きもの!乙女のごとき血をもて拒め!
040:道
蛇の道は蛇よ 貴様の寝首掻くことも叶わず 堕ちてゆく **
041:こだま
悦楽の声は闇夜にこだまして ガーゴイルまた目が充血だ
042:豆
たまさかのひとりよがりは知られざり珈琲豆を煎る苦き朝
043:曲線
知らざるは寝るものばかり赤き目のきみが忘我よ脊(せな)の曲線
044:飛
果てしなく翼ひろげてありあけの月に向いて飛び発つる日よ
045:コピー
同胞(はらから)はいづれは果つるその日までDNAの無限コピーを!
046:凍
闇のもの魔のもの俺が愛すもの汝(うぬ)らが額(ぬか)に凍りつく血よ
047:辞書
叶うなら呪文授けよ!貴様らを辞書の見出しに封じ込めんと
048:アイドル
タレントは才ある者でアイドルは、おっと言わずもがなだな、ビリー。
049:戦争
神々の代理戦争、さもそれが人の世である道理のように。
050:萌
憎しみの萌芽、貴様の冗舌に拳かためる理性はあるぜ。
051:しずく
葡萄なるひとふさよ汝(なれ)、静止せよ。青きしずくをしぼり取るまで
052:舞
牧神の舞踏果てたる午後の陽の草いきれ 嗚呼、汗に爛れて
053:ブログ
廃屋の隅よりひそと発信すウェブログなる闇の日綴り
054:虫
貴様らの頭(づ)に涌く虫を何と言う?痴れたこと “IT's not your buisiness!”
055:頬
その頬に触れよ ケガレの指をもて 蜘蛛の脚ほど伸ばしたる爪
056:とおせんぼ
逃げたくば逃げよどのみち帰れまいとおせんぼさる六道の辻
057:鏡
捕捉せよ俺が足下に跪け おうよ、鏡を見るように汝(うぬ)!
058:抵抗
抵抗の痕なまなまし青痣に蜘蛛を這わせて笑む不死の者
059:くちびる
なにゆえにそこだけ紅いくちびるのぬめぬめとまた頸に吸いつく
060:韓
青き者。弱きを組み伏せてこそ俺よ、韓盧を馳せて兎逐うべし!
061:注射
研ぎ澄まし尖らせて待つ皮下注射 親指は掌(て)に握っておきな
062:竹
僕の血をすすりとる、否、そうじゃなく孟宗竹の笹鳴りの音
063:オペラ
愛らしく乱れておれば口を突くソープオペラの安物台詞
064:百合
しらじらと露を含みて蒼白き百合のつぼみは鉄砲と化す
065:鳴
共鳴の刹那 ぼくらはすり替わる 夜来の雨に鵺の飛び発つ
066:ふたり
名を呼べばきみとぼくとのふたりきり交わる先の闇の深まり
067:事務
魂を取り逃がしたる不始末よ、魔王が庁の事務官を呼べ!
068:報
青きもの愛おしきもの俺がもの報告書には「不覚」とぞ記す
069:カフェ
長雨のカフェにコートの男来ておもむろに告ぐ「地獄焙煎…」
070:章
血のごとき珈琲深く濃く薫り さてこの章はひとまず休す、か。
071:老人
さて、そこな御老人には見えるかね? 俺が背(そびら)の真黒き翼
072:箱
なかなかに化けたものだなヴァンパイア 木箱ごとごと八卦見の立つ
073:トランプ
トランプは千々に乱れて舞い踊り 不死者、なにゆえ現世(うつしよ)に在る
074:水晶
この爺に嘘は吐(つ)けぬぞ冥王の使者も映りし水晶の眼ぞ
075:打
打ち据えて黙らせるには老いぼれよ俺が冥府の入口と知れ
076:あくび
安らかに星の消えたる闇空に遠きあくびのケルベロスかな
077:針
大海に投じられたる金の針きみをすくいにゆくぼくのひれ
078:予想
予想図は大きくたわむ海上を侵犯しつつあるハリケーン
079:芽
悪しき芽は早々に摘むさはれ愛の芽よ花の咲くまで見分けもつかぬ
080:響
きりきりと臓腑に響く音のして 窓外一面の棘荊(とげ・いばら)
081:硝子
雨音に紛れ来りし魔のものよ 硝子戸に這う彼(あ)の爪の痕
082:整
「身辺を整理されたし」一葉の通知届けに来るガーゴイル
083:拝
光なす闇なす天地分け隔つ拝火教にもうすくらがりを
084:世紀
冥王の星も掻き消す嵐きて魔王世紀のあらまほしけれ
085:富
ぬばたまの黄泉のくにより涌くがあり。富みて栄ゆる人ぞ、殲滅
086:メイド
海ふかく拾いあげたる金の針マーメイドそのまなうらに刺し
087:朗読
夜伽には呼ぶに及ばず罪深きセイレーン朗読せる聖書
088:銀
魔の殖えて品不足ゆえ水銀を込めた散弾銃は完売
089:無理
その姿、変幻自在にして不可視。無理を承知で逐う麻薬犬
090:匂
昼食のパスタに匂うガーリック 顔を顰むるひとりありけり
091:砂糖
貴殿なにを悶絶しやる パニックに落ちて砕ける砂糖壺など
092:滑
滑稽な芝居と嗤(わら)え 白昼を天球半ば暗黒に染む
093:落
墜落し堕落し天使ゆく先は失楽園のその果ての果て
094:流行
なだれ込む闇の瘴気に咽せながら流行り病の兆す紅斑
095:誤
「人の子よ地上これより魔界なり」誤報打ち続ける送信機
096:器
人の子は真白き器 先ず赤き血をば注ぎし神の業なり
097:告白
聴いているか 俺が愛する人の子のたったひとりに告白をする
098:テレビ
孤独とは不死者の掟「破りたれば」テレビ塔より闇の飛び去る
099:刺
いまわかる 彼の痛みとぼくのそれ 頸に刺さったままのくちづけ
100:題
愛すべき者に課題を残し置く「月の裏側まで飛んで来い!」

[PR]

by tanka_meitey | 2009-03-01 00:01 | 先代冥亭分預り