老病も諧謔とせむ

疲労つもりて引き出ししヘルペスなりといふ 八十年生きれば そりやぁあなた  斎藤史




何を今更てな大御所ではあるが、そりやぁあなた、「濁流だ」の辺りのハナシでしょ? 冒頭の歌を初めて目にした時、「斎藤史もおんなじ人間や〜♪」みたいな(当り前田が)ほっこり感で安心したのだ。以来、彼女の名にビビる、ちうか構えることなく作品を鑑賞出来るようになった気がする。

男の大御所はまぁそれぞれですが、女の大御所ってのは、ひとくくりに何とも扱いづらい。「女流」という枠組そのものが逆に武器になっているのか、ぶっちゃけ、女流はなるたけ避けて通りたいジャンルです…(-"-;) どの作家見ても必須項目みたいに「ちちふさ」が揺れゆれて…アカンアカン★
おかしなもので、「台所俳句」などと揶揄されて久しい俳句の方では、むしろ馴染み易かった。

 あはれ子の夜寒の床の引けば寄る・中村汀女

家庭に材を取ったものが平均苦手な冥亭をして、女性俳人の最高傑作だと思っている一句。いっぺん思いついてこの句の解体をしてみた…「床引けば寄る子のあはれ夜寒かな」…凡人にはこの程度。いきなり「あはれ」をストレートで投げ込んで、あとは事実畳み掛け。その隙のない構成力に感服してしまったのである。

さて本題:わたくしごとで申し訳ないが、わが母も七十代の頃ヘルペスをやっているので、ものすごくやっかいな病気なのは理解出来る。悶絶するほどの激痛に見舞われるそれをやねぇ、「そりやぁあなた」で諧謔にしちまうずぶとさがアッパレ(^^ゞ この頃に見られる「老」も詠嘆にならず、不思議と軽やかですらある。

するすると夕闇くだり見て居れば他人の老はなめらかに来る

婚姻色の魚らきほひてさかのぼる 物語のたのしきはそのあたりまで

氷魚(ひず)食めば歯に砕けつつ溶けやらぬ 忘れず壮年死の男一匹

生残りとなりて居りつつ死遅れとならざる境踏みわけらるるか

馬駆けて馬のたましひまさやかに奔騰をせりしたりや!〈葦毛〉

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by tanka_meitey | 2009-10-20 23:07 | 喫歌室